山の知識を駆使する施業の司令塔
さっそくですが、森林施業プランナーのお仕事について教えてください。
森林の施業計画を立て、それに伴う山主さん(森林の持ち主)や現場作業班への説明、利益の見積りの作成が主な業務です。具体的には、森林整備を行う山の調査や測量、GIS(地理情報システム)の更新、見積もりの作成、山主さんへの提案、訪問、現場作業班への説明など。現場作業班と山主さんのそれぞれに関わるつなぎ役でもあります。
事務作業や山主さんへの訪問・説明など山以外の場所で行う業務もあるんですね。
そうですね。でも、山に入って、歩きながら現場を把握する時間の方がはるかに長いですよ。
計画に入っていない山の木を伐らないように境界を区切る測量や地形データの取得で山に入る必要があるし、道の入れ方や、山の状態を現場作業員から聞かれることもあります。だから、境界以外もくまなく見て回ります。指示を出すからには山の現状に誰よりも詳しくありたいと思っています。
どのような経緯で森林施業プランナーの資格を取得されたんですか。
森林組合に入った当初の林業は、伐った木をそのまま林内に置いてくる切り捨て間伐が主流でした。それから数年経った頃に、伐った木を運び出して市場で売ることで利益を上げようという方針になったんです。はじめは何もかもが手探りでした。山によって地形や特徴が違うし、実際に作業が始まってわかることもあるから、計画通りにいかないこともあります。ときには利益が出なかったことも。当時は、間伐材を搬出して販売する「搬出間伐」がまだ浸透していませんでした。だから、自分が知識を提供する努力をしないといけないと思いました。知識を得るための勉強の延長線上として森林施業プランナーの資格を取得しました。
仕事と並行して一年ぐらい参考本で勉強して、現場に足を運ぶことも大事にしていました。他県の林業事業者と交流して学んだこともあるし、一番大きいのは自分の経験ですよね。だんだんと効率的なやり方を覚えていって、今では1ヘクタール30〜40万円ほどの利益を還元できるようになりました。
業界に良い変化が生じる可能性は十分ある
山主さんとのコミュニケーションも業務の一つ。信頼されるために心がけていることはありますか。
顔を合わせて話すことです。書類だけのやり取りはほとんどしません。いきなり「お金あげますよ。だから山の木を伐らせてください」って書類が送られてきても多分信用してもらえないでしょう。世間話もたくさんします。なんならそっちの方が多いぐらい(笑)
佐賀は、面積の小さい森林を持っている山主さんが多いから、施業の時はなるべく一度にまとまった規模の森林を伐採できるようにします。多い時は、一度の施業で20人ほどの山主さんとお話しします。
コミュニケーション力も必要なお仕事なんですね!森林施業プランナーの視点で見た時、佐賀県の森林の課題はどこにありますか?
山主さんの関心が低いことです。森林のサイクルは数十年単位だから、山主さんの世代が変わったらほったらかしになって荒れた森林になってしまうこともあります。「山なんてお金にならない」というこれまでのイメージから「山を育てると利益が出る」と知ってもらうことで、意識が変わり、業界も変わるのではないかと期待しています。
行政と組合が協力して山主向けの講習を行なっているところもあります。できることから地道にやっていこうかと思っています。
山主さんに「山を持っていて良かったな」と思ってもらえるようになるのが目標ですね。
お仕事をしていて、良かったと思えるのはどんな時ですか。
長年手が入ってなかった荒れた山がきれいになった時、森の中に日が射すようになるんです。本当に気持ちいいです。またがんばろうと思えます。山の見た目がきれいになって、環境のためにもなっている。山から収益を得ることができて山主さんに『ありがとう』って言ってもらえる。嬉しいことが多い仕事ですね。