40歳未経験から林業の道へ
40歳から林業の仕事を始められました。きっかけはなんでしたか。
佐賀の実家に帰らないといけなくなったことです。それまでは福岡で営業の仕事をやっていましたが、年齢のためか専門分野を持っていないと応募できない求人が多くて、なかなか思うように仕事が見つかりませんでした。そんな中で見つけたのが、ウッド・エコー産業の求人だったんです。
それまでは林業と全くかかわりのない仕事をされていたんですよね。不安はありませんでしたか。
林業のイメージは全くなかったんですが、直感的に「なんとかやれるんじゃないか」と思いました。学生時代はずっと体育会系の部活に入っていたから体力には自信がありましたし、実家が造園業だったこともあって作業服のような格好にも抵抗がなかったんです。
親には「危ないんじゃないか、お前には無理だ」と反対されましたけど、やはり自分のことは自分で決めないと。
実際に働き始めてどうでしたか。
体力には自信があったのですが、一日働くともうへとへとです。斜面を登って降りて、一日中体育をしているようなものですからね。それなのに、一緒に働いている60代半ばの人は平気そうな顔をしていて落ち込みました。
それと、多少の雨なら除伐や下刈りをするんですよ。斜面で作業していたら、刈払い機を持ったまま滑って転んで、イノシシの巣に突っ込んだこともあります。
はじめの頃は、なんでこんなことしているんだろうと嫌になって辞めることも考えましたね。
どうして続けていくことができたのでしょう。
福岡から佐賀の実家に帰るときに、妻と子どももついてきてくれました。家族で生活していくことを考えたらやるしかない、と。それから、初めて働いた会社では毎月昇進などにかかわる試験があったのですが、ちゃんと頑張れないまま辞めてしまったんですね。それがずっと心残りで、ここで辞めたらまた同じだなと。だから、頑張ってみようと思えました。最初はとにかく“なにくそ根性”だけでしたよ。体を動かすのが楽しいと思えるから続けてこられたのはありますね。
現在では10年目の中堅として後輩の指導にもあたられています。
入ってから一年ちょっと経つと、すごくきれいに木を伐れるようになっています。うちは班を固定しているわけではないので、中堅やベテランがそれぞれ現場で一緒になった新人に教えていくスタイルですが、成長を見られるのは嬉しいですね。
木塚さんが思う「林業に向いている人」とはどのような人ですか?
集中力と周りを見るバランスがとれている人ですかね。たとえば、木を伐るときには集中力も必要ですが木が倒れていく方向に人がいないか、周りはどのような作業をしているかを確かめながら進めていく必要があります。一つのミスが大きなケガにつながるから、気をつけることはたくさんありますね。
体力についてもよく聞かれますけど、働くうちについてくるからそこはあまり心配しなくていいと思います。
林業だから兼業とも両立できている
ご実家がされている農業と兼業されているそうですね。
実家が田んぼを持っているので農繁期は有休を含めて20日近く休むこともあります。これまで働いていた会社だったらそういう働き方はできなかったと思います。会社が理解を示して、スケジュールの融通をきかせてくれるのはありがたいですね。林業で経験した刈払い機の使い方や重機の乗り方が農業にも生かされています。
佐賀での生活はいかがですか。
家族みんなで戸建てで暮らすのが夢だったのですがそれが叶いました。子どもも保育園にすんなり入れたし、自然が豊かな場所で走り回りながら育っていますね。子育てするにもいいところだと思います。妻も働いているので、ときどきは僕が料理を作ることもあります。必ず夕方に仕事が終わるから、子どもと過ごせる時間もたくさんありますし、トータルで考えると都会で働いていた頃より今の方がずっといいなと思います。
木塚さんが感じる林業の魅力を教えてください
やっていくうちに、だんだんと一本一本の木の違いがわかったり、木を伐るときにもうちょっと上手くできたかなと思ったり、同じ作業を繰り返しているようでもさまざまな気づきが生まれるのがおもしろいです。